これまでどこかのエステサロンで働いていた、あるいはエステサロンの利用経験があるという方なら覚えがあると思いますが、エステサロンで始めて施術を受ける場合、同意書に署名を求められます。
これからエステサロンを開業する方も「同意書を用意・準備しなければならない」とお考えになっているかもしれませんが、そもそもなぜ同意書が必要なのでしょうか。また、同意書にはどのような文言を記載すれば良いのでしょうか。
他にも同意書に関して何らかの疑問を抱いている方向けに、今回のコラムではエステサロンに必要な同意書について解説していきます。
エステサロンに必要な免責同意書とは?
まず、多くのエステサロンで取り入れられている同意書とは何なのでしょうか。
正確には免責同意書と呼ばれますが、その役割は施術に伴うトラブルにおいて、全ては顧客の自己責任であり、サロン側はその一切を負わないという旨に同意してもらうということです。
サロン側が日頃から安全な施術を心がけることはもちろんですが、もし実際に施術中、あるいは施術後にお客様が何らかの被害を訴えても、サロン側がその責任を追及されることはありません。万が一賠償金を請求されるような事態に発展しても、応じる必要はないということになります。
同意書はお客様にもメリットがある
免責同意書の交付はお客様自身を守ることにも繋がります。
というのも、同意書に署名する際、サロン側は必ず施術に伴うリスクや注意点をお客様に口頭、あるいは書面で説明する必要があります。それによって、お客様自身もどのような危険があるのか正確に知ることになり、予期せぬトラブルを引き起こす事態を回避することができます。
具体的にどのような事項を掲載していくかは、次から解説していきます。
エステサロンの同意書に必要な免責事項
エステサロンの同意書の免責事項として、最低限掲載しておくべきなのは以下の項目です。
- 体質に関する免責次項
- 当日の体調に関する免責次項
- 持病・通院歴に関する免責次項
- 未成年者に関する免責次項
体質に関する免責次項
まずはお客様自身の体質に関する免責事項です。具体的には以下のような例が挙げられるでしょう。
- アレルギーの有無
- アトピーかどうか
- 敏感肌かどうか
エステサロンでは施術に使用する機器、あるいは消耗品の類をお客様の身体に直接当てることも珍しくありませんが、体質次第で何らかの症状を引き起こす恐れがあります。トラブルを回避するため、事前に説明するだけでなく、可能であればパッチテストを行うのが望ましいです。
当日の体調に関する免責次項
体質と同じく、施術当日の体調についても伺いましょう。
- 疲労感や気だるさがないか
- 発熱や咳のような症状がないか
- 飲酒していなか
- 生理中・妊娠中でないか
- 直近に予防接種や献血をしていないか
このように、施術内容によって何がトラブルの要因になり得るかは異なりますが、必要な項目は漏れなく掲載しておくべきでしょう。
持病・通院歴に関する免責次項
持病や通院歴についても確認しましょう。理由は既に解説した免責事項と同じで、お客様が負うリスクを少しでも軽減するためにこちらも押さえておきましょう。
並びに薬の服用に関しても注意が必要です。場合によっては担当医の承認を得なければならないケースも考えられます。
未成年者に関する免責次項
最後に解説するのが、未成年者に関する免責事項です。こちらは内容そのものではなく、署名の効力に関する問題です。
近年は中学生や小学生のような子どもも美容に興味を持ち出す時代であり、実際に未成年者がエステサロンを訪れることは珍しくありません。その際も同様の説明をすることになりますが、未成年者の署名の効力は絶対ではなく、シチュエーションによっては無効になってしまう可能性もあります。
そのため、お客様が未成年の場合は必ず保護者にも同じ説明をし、署名をもらうようにしましょう。
美容機器メーカーが用意してくれることも
同意書に掲載すべき主な項目は上で解説した通りですが、実際はエステサロンの種類に応じて細かい項目を追加する必要があります。そのため、同意書の作成は決して容易なことではないでしょう。
そこでぜひ知っておいてほしいことは、美容機器メーカーが免責同意書を提供してくれる場合があるということです。
近年の美容機器メーカーは、マシンを購入してくれたオーナー様に経営支援を行うのが一般的になっていますが、中にはその一環として販促アイテムや必要書類を提供してる場合があります。実際はメーカーによって異なるので、興味があれば購入予定の美容機器のメーカーに問い合わせてみると良いでしょう。
エステサロンでは法定書面も必要
免責同意書と同じように、長期プランがサービスにあるエステサロンでは法定書面をお客様に渡す義務があります。
法定書面には契約の概要について解説した「A:概要書面」と、契約内容を明記した「B:契約書面」の2つがあり、具体的な内容は以下のようになっています。
A:概要書面
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 役務の内容
- 購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
- 役務の対価(権利の販売価格)その他の支払わなければならない金銭の概算額
- 上記の金銭の支払時期、方法
- 役務の提供期間
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
- 前受金の保全に関する事項
- 特約があるときには、その内容
B:契約書面
- 役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
- 役務の対価(権利の販売価格)その他の支払わなければならない金銭の額
- 上記の金銭の支払時期、方法
- 役務の提供期間
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 契約の締結を担当した者の氏名
- 契約の締結の年月日
- 購入が必要な商品がある場合には、その種類、数量
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
- 前受金の保全措置の有無、その内容
- 購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
- 特約があるときには、その内容
契約期間が1カ月を超える、あるいは金額が5万円を超える場合には上記の2種類の書類を渡す義務があります。
また、同意書の作成においてはこちらの資料も参考になります。全日本全身美容業協同組合「エステティックサロンでの契約について 」
お客様の不安を解消する方法
サロンオーナーが知っておいていただきたいのは、お客様の中には免責同意書に署名を求めることで不安を抱く方もいらっしゃるということです。施術にリスクがあることを伝えているため、決しておかしいことではありません。
最後にそのようなお客様の不安を解消する方法を解説いたします。
- 丁寧な説明・対応を心がける
- 過去の施術歴から安全性を伝える
- ドリンクやアロマを用意する
丁寧な説明・対応を心がける
まず大前提となるのは、丁寧な説明・対応を心がけるということです。内容はもちろんですが、スタッフがお客様に信頼してもらえないようでは、完全に不安を払拭することは困難でしょう。カウンセリングなどのコミュニケーションを通して、お客様の緊張をほぐし、リラックスした状態で施術を受けてもらうのが望ましいです。
始めてエステサロンでの施術を受けるお客様に不安は付き物です。お客様の質問には誠実に対応し、極力不安や不満が残らない様にしましょう。その為に、スタッフの教育やマニュアル作りにも力を入れましょう。
過去の施術歴から安全性を伝える
これまでの施術歴において、目立つトラブルを起こしたことがないのであれば、そのことを伝えて施術が限りなく安全であることを伝えるのも効果的です。具体的な数字を示すことで、安心感を抱くお客様も多いです。
仮にトラブルの事例があるのであれば、何が原因があったのか、そのような事態を回避するためにどのような対策が必要なのかを誠実に伝えるようにしましょう。
ドリンクやアロマを用意する
暖かいドリンクを提供したり、アロマを使用するというのもおすすめです。他にもリラックス効果のあるアイテムを使用することは、お客様に安心感を与えることに繋がるだけでなく、施術の満足感を高めることができます。
それによってリピーターになってくれる可能性も高まるため、一石二鳥だと言えるでしょう。
サロンのためにもお客様のためにも同意書の用意を
文中で解説した通り、免責同意書はエステサロンはもちろん、お客様自身を守るためにも非常に重要な役割を担っています。施術内容によって必要の有無は異なるかもしれませんが、わずかでもリスクが伴うサービスを提供するのであれば、必ず用意するようにしましょう。