エステや脱毛サロンには、リラックスしてもらうためのBGMが不可欠。
ピアノやオルゴールなど、心地よく耳馴染みのいいBGMを流したい! と考えている個人サロンのオーナーさんも多いのではないでしょうか?
しかし、音楽の著作権にはかなり厳密なルールがあるのです!
営業準備としてきちんと手続きを準備するか使えるBGMを用意していないと、知らない間に著作権を侵害してしまっているかもしれません。
今回のコラムでは音楽の著作権についてお話します。サロンでBGMを使う場面を想定しながら説明するので、自店での営業と照らし合わせてみてくださいね。
著作権に関する基礎知識を知ろう
誰しも一度は「著作権」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
自分が正しく著作権について認識しているか、今一度確かめてみましょう。
著作権の定義は?
知的財産に関する専門家「弁理士」の業務改善や普及、登録業務などを行う日本弁理士会(https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/copyright/)によると、「著作権」の定義は以下のようになっています。
【引用】著作権は著作物を保護するための権利です。 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。【引用終わり】
上にある通り、著作物を著作した人が他者に干渉されずに自由にその著作物を利用できる権利を「著作権」と言います。
なぜ著作権が必要なの?
音楽をはじめとする著作物は、著作者が努力し苦労して自分の感情を表したものです。つまり、著作物は著作者にとっての財産も同然です。
お金を得て施術する個人サロンで無断使用してしまうのは、人の財産を勝手に使ってお金を稼いでいることと同じなのです。
インターネット上の無断アップロードやダウンロードも、本来お金を払うべきものにお金を払っていないわけですから、万引きと変わりありません。
著作権は著作者の権利を守り、著作物の正しい利用を促進するためのものなのです。
著作権を侵害したらどうなるの?
音楽を無断で使用している店舗に対して、著作者は使用差し止めや賠償請求を起こすことができます。
それでも無断使用をやめない場合には、刑事法上で罰せられます。その場合の罰則は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に該当します。
(参考:文化庁[https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h18_hokaisei/qa_10.html])
著作権がない著作物はあるの?
原則として、すべての著作物には著作者がおり、完成した時点で著作権が発生します。
楽曲や音楽の中には「著作権フリー」として配布販売されているものがありますが、法的な観点から見ると「著作権フリー」という言葉は正しくありません。
音楽を例に考えよう
サロンのBGMが欲しいあなたが「著作権フリー」と説明された音楽を購入した(配布してもらった)とします。
音楽を有料で販売するという行為は、音楽を所有している人(著作者)がいることが前提となっています。ですので、著作権フリーと有料販売は矛盾した状況です。
無料配布していたとしても、著作権を不特定多数の人に何重にも渡していることになりますから、こちらも著作権の考え方の上で矛盾しています。
つまり、著作権そのものは著作者が持ったままの状態になっており、あなたの手元にあるわけではありません。
著作権は放棄されず、ライセンスを持った状態
音楽にお金を払った、あるいは配布されたあなたは、著作権そのものではなく、著作物を店舗や映像作品など何らかのBGMとして利用できる許諾(ライセンス)を受けることができます。
ライセンスの条件は著作物によって異なります。
例えば音楽Aは「商用利用可」とされ、音楽Bは「商用利用不可」とされている場合、個人サロンのBGMとして使用できるのは音楽Aだけです。
また、著作者からライセンスを受けた人が著作物を第三者に有償で販売したり、無償で配布したりすることは禁止されています。
つまり、音楽を持っているあなたが他のサロン経営者に音楽を渡すことはできないのです。
今回は音楽を例として紹介しましたが、他の著作物においても考え方は同様です。
「バレなければ大丈夫」はキケン
2015年から、後述するJASRACが著作権使用料未払いの事業者や店舗に対して全国一斉の民事調停の申し立てを行っています。
お客様に安心して施術を受けて頂くためにも、お店の評判や健全な経営、訴訟リスクをなくすためにも、JASRACが管理する楽曲を使用したい場合については必ず許可を受けましょう。
参考:一般社団法人日本音楽著作権協会のプレスリリース
(BGMを利用する美容室・飲食店など全国151事業者に対して民事調停の申し立て:https://www.jasrac.or.jp/release/18/1807_1.html)
ところで「JASRAC」ってなに?
JASRAC(ジャスラック)は一般社団法人日本音楽著作権協会の略称で、日本の商用的楽曲の多くを一元管理している組織のことです。
作曲者や作詞者、音楽出版者らから音楽著作権の管理を委託され、彼らから著作権の移転を受けたJASRACが著作権を保有することで、著作権の対象である著作物(楽曲、歌詞)の利用希望者に対して利用許諾を行っています。
個人サロンであっても、楽曲を使用したい場合にはJASRACへの申請が必要となります。
パターン別に著作権侵害か否かを考えてみよう
著作権について簡単にご説明しましたが、「サロンで音楽を使う時にどこまでがOKでどこからが問題になるの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
ここからは、具体的な事例を交えてOKかNGかをご説明します。
休憩室で使用する音楽は許可を取らなくてOK?
休憩室だけで流すのであればOKです。
OKとNGの線引きは「金銭が発生するシーンかどうか」、すなわち「お客様がいらっしゃる場所かどうか」と考えるのが良いでしょう。
このケースであれば、金銭が発生しない休憩室では大丈夫。
施術室や待合室など、お客様がいて金銭のやり取りまたは金銭に相当する行為(サロンの場合、施術やカウンセリングなどです)がある場所で使うBGMであれば、許可が必要となります。
購入したCDや有料ダウンロードした音楽を申請なしで店舗使用するのはOK?
これはNGです。
店舗で使用する限り、利益が発生しています。どの形式であろうと、購入したものであろうと、利益発生がある場合は許可が必要です。
YouTubeの動画をBGMにすればOK?
動画そのもの、動画から音声をダウンロードしたもの問わずNGと考えてください。
サブスクリプションサービスなど以外でインターネットから利用できる音楽は、著作者が許可していない無断アップロードのものである可能性があります。
動画そのものが著作権に抵触していることも多いので、リスクを避けるためにも動画の使用はお勧めしません。
ラジオの音声を流すのはOK?
録音していない生の音源ならOKです。
有線放送などはBGMの音源提供事業者から正式に音源の提供を受けているため、業者がお店に代わって音楽著作権使用料を支払ってくれています。
許可がいらないのは「リアルタイムで流れている公共放送」に限定されていることを忘れないよう注意したいですね。
安全にBGMを使うには?
店舗用のBGMをリスクなしで使いたい場合は、以下のような方法が有効です。
- JASRACに利用許諾を申請する
- 店舗BGMアプリを使う
- フリー音源サイトやCDを利用する
- 有線放送を利用する
いずれの方法にしても、お店に万が一の事態が起こらないようよく調べてから進めましょう。
申請や音源の用意はオープン直前ではなく余裕を持って早めにしておきたいところです。
JASRACに利用許諾を申請する
最も安全なのは、JASRACに楽曲を使用したい旨を申請して許可を受けること。
必要な使用料は店舗の面積によって異なり、500平方メートルの店舗であれば1カ月1,200円、年額で6,000円です。
年間使用で申し込めばかなり割安になるので、期間限定のサロンなどでなければ年額で申し込みましょう。
申し込みは以下のURLから行うことができます。
店舗BGMアプリを使う
店舗用BGMアプリは、スマートフォンやタブレットに専用のアプリをダウンロードして使える店舗用の音楽配信サービスです。
著作権をクリアしている楽曲を豊富に備えており、なおかつリーズナブルなサービスが多いため、自分の店舗に合った曲調のBGMを安く選んで使用できると人気が集まっています。
スマートフォンなどがあればすぐに使えるのも強みです。
フリー音源サイトやCDを利用する
アプリではなくサイトからダウンロードする形やCDの形で店舗用の楽曲を使用できるサービスも多くあります。
有線放送を利用する
有線放送は光回線や衛星、ケーブルなどインフラネットワークによって利用されるサービスです。
J-POPや洋楽、クラシック音楽、ジャズ、ヒーリングミュージックなどジャンルによってそれぞれ専門のチャンネルが設けられているため、自分で曲を選ばなくてもお店にあったBGMを用意できます。
有線放送を導入したい場合は、専用のチューナーや音響器材を用意し設置工事をしてもらわなければなりません。
また、月額利用料は一般的に5,000円前後と他のサービスに比べ少し割高です。
サロン運営時にはBGMの著作権にも目を向けて!
資金繰りや美容機器の準備などに気を取られ、ついつい忘れがちになってしまうBGMの準備。
しかし、心地よい音楽はお客様のリラックスを促すためにも不可欠です。
楽曲を使用する際には著作権をクリアして、有事のリスクを減らしましょう。