エステサロンの開業にあたって、どのような書類が必要なのか気になっている方も多いのではないでしょうか。個人事業主としてサロンを開業する場合は、開業届を出すべきかどうかも頭を悩ませるポイントです。
この記事では、エステサロンの開業に必要な書類と、さまざまな届出について解説しています。個人事業主が開業届を出すメリットもまとめているので、あわせてチェックしてください。
エステサロンの開業に必要な書類
個人事業主としてエステサロンを開業する場合、次のような書類が必要になります。
- 開業届出書
- 賃貸契約書
- 保健所への届出書類(必要に応じて)
- 事業計画書
開業届は税務署に提出する書類で、事業の開始日から1か月以内に提出します。
もし、何らかの事情で開業届を出さないとしても、とくにペナルティはありません。しかし、税制優遇が受けられない、といったデメリットがある点には注意が必要です。
また、施術内容によっては保健所への届出が必要になるため、事前に地域の保健所に確認しておきましょう。このほか、融資や助成金の申請には事業計画書が、店舗を借りる場合には賃貸借契約書などが必要です。
事業所得が増えて法人化する場合は、設立届出と自治体が指定する書類を提出します。
開業届を提出するメリット
ここでは、開業届を提出することで得られるメリットについて解説します。
青色申告が選べる
開業届を提出すると、青色申告が選択できるようになります。申告することで年間65万円の控除が受けられるなど、高い節税効果が期待できます。
家族への給与が経費になるほか、30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上できるのもメリットです。また、正確な帳簿の作成が求められますが、赤字を最長3年間繰り越せるため事業のリスク管理もしやすくなります。
青色申告を行う場合は、開業届とともに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しましょう。
屋号で銀行口座が作れる
開業届を提出すると、サロンの名前である「屋号」で銀行口座が開設できます。屋号付きの口座は個人名義の口座と区別できるため、会計処理で混乱しません。
とくに青色申告の場合は、正確な帳簿管理のために事業専用の口座が欠かせません。また、取引先から「正式な事業である」と判断されやすくなり、仕入れなどのハードルが下がるのも利点です。
ただし、屋号付き口座の開設には開業届の控えが必要なので、事前に開業手続きを済ませておきましょう。
小規模企業共済に加入できる
開業届を提出すると、小規模企業共済に加入できる資格が得られます。小規模企業共済は、個人事業主や小規模経営者のために国が提供している制度で、退職金の準備などに有効です。
掛金は、月1,000円から70,000円の間で自由に設定でき、その全額が所得控除の対象になります。そのため、節税効果としても経営の助けになるでしょう。
さらに、廃業や死亡時にも共済金が支給されるので、万一のときも安心です。ただし、加入には条件があり、副業で給与所得がある人などは加入できないので注意してください。
開業届の書き方と提出方法
エステサロンを開業するための「個人事業の開業・廃業等届出書」は、税務署で入手できるほか、国税庁の公式ウェブサイトからもダウンロードできます。必要な項目を記入し、都合のよい方法で提出しましょう。
開業届の書き方
エステサロンの開業届には、以下の情報を記載します。
- 氏名・住所・連絡先:開業者自身の基本情報
- 屋号:エステサロンの名前
- 職業:エステティシャン(セラピストなどでもOK)
- 開業日:事業を正式に開始する日付
- 事業の概要:提供するサービスを具体的に記載
- 所得の種類:事業所得
事業の概要は、「エステサロンの経営」や「化粧品の販売」など、わかりやすく記載してください。
また、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っていない場合は、職業欄に「マッサージ師」と書かないように注意しましょう。
開業届の提出方法
開業届は、次の3つの方法で提出できます。
- 窓口提出
- 郵送提出
- 電子提出(e-Tax)
税務署の窓口で提出する際は、マイナンバーカードや印鑑も持って行くと、手続きがスムーズです。
また、郵送の場合は必要書類とともに返信用封筒を入れ、控えを送り返してもらいます。ただし、e-Taxで提出する場合は、印鑑が押された控えがないので、控えの代わりになる書類をダウンロードしておきましょう。
このほか、青色申告をする場合は「青色申告承認申請書」を、インボイス登録する場合は「消費税課税事業者選択届出書」も併せて提出してください。
【エステ開業】保健所への届け出が必要なケース
エステサロンを開業する場合、基本的に保健所への届け出は不要です。ただし、施術内容によっては営業許可を得る必要があるので確認しておきましょう。
国家資格が必要な施術する
エステサロンで、次のような施術を行う場合、専門資格と保健所への届け出が必要です。
- まつ毛エクステ:美容師免許
- 顔そり:理容師
- 指圧マッサージ:あん摩マッサージ指圧師免許
- 鍼治療:鍼灸師免許
これらの施術を提供する場合は、保健所に必要な設備や資格証明書を提示し、法的な許可を得なければなりません。
エステサロンでは、さまざまなサービスを提供するケースがあります。そのため、事前に届出が必要な施術はないかどうかを確認しておくことが大切です。
首から上の施術を行う
首から上の施術を専門的に行う場合は、保健所への届出が必要になることがあります。たとえば、お顔のシェービングには理容師免許が必要なため、保健所に届け出なければなりません。
とくにブライダルエステでは、まつ毛パーマやフェイシャルエステ、顔のムダ毛処理を行うことがあるので注意が必要です。開業前には、施術内容について保健所に相談し、必要な届出や資格をしっかり把握しましょう。
エステでスタッフを雇う場合の書類
スタッフを雇用する場合は、開業届や営業許可とは別の手続きが必要です。手続きに必要な書類と提出先を解説します。
年金事務所
スタッフを社会保険に加入させるためには、年金事務所での手続きが必要です。「健康保険・厚生年金保険新規適用届」と「被保険者資格取得届」を提出し、スタッフが健社会保険に加入できる状態を整えます。
ただし、加入が義務付けられるのは、正社員だけではありません。一定の条件を満たせば、パートやアルバイトも対象になるため注意しましょう。
また、この手続きは、原則として雇用開始から5日以内に必要書類を提出しなければなりません。
ハローワーク
ハローワークに対しては、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。これは、雇用保険への加入手続きです。
雇用保険の適用を受けることで、スタッフが失業した際に失業手当を受けられるようになる仕組みです。週20時間以上の労働と、31日以上の雇用が見込まれるスタッフが対象になります。
また、サロン側は、従業員を雇い入れた日の翌月10日までに、管轄区域のハローワークに申請しなければなりません。この手続きは、対象となるスタッフが入るたびに行う必要があります。
労働基準監督署
労働基準監督署には「保険関係成立届」を提出し、労災保険の適用手続きを行います。これは、業務や通勤中に起きた傷病に対して、スタッフが補償を受けるために必要です。
また、スタッフを10人以上雇用する場合は、「就業規則」を作成し、労働基準監督署に届け出ましょう。就業規則には、勤務時間、給与、休日、退職に関する詳細なルールを明記してください。
このほか、スタッフ全員に労働条件通知書を交付し、労働契約内容を明確にすることも義務付けられています。
必要な書類をそろえてスムーズに開業しよう
個人事業主としてエステサロンを開業する場合には、開業届を提出しましょう。届出をしなくてもペナルティはありませんが、税制優遇が受けられなくなるため注意が必要です。
このほか、国家資格を用いて施術する場合には保健所に届け出を、スタッフを雇用する場合はハローワークなどにそれぞれ届け出てください。申請の際は、事前に必要な書類を確認して準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。