自宅サロンを開業する際、大きな課題となるのが初期費用の負担です。
そんなときに役立つのが、国や自治体が提供する助成金。助成金を活用することで、設備費や人材育成費など、開業に必要な費用の一部をカバーすることが可能になります。
この記事では、自宅サロンの開業に役立つ助成金の種類や活用方法、補助金との違いなどを詳しく紹介しています。開業を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
助成金とは?
助成金とは、国が特定の目的に対して支給する返済不要の資金のことです。
一方、助成金と似たものに補助金があります。補助金は新規事業の支援や地域振興などを目的として支給される資金です。
助成金は一定の要件を満たせば比較的受給しやすいのに対し、補助金は公募形式で審査があり、競争率が高いのが特徴とされています。自宅サロンを開業する際には、これらの制度を適切に活用することで、初期費用の負担を軽減できます。
自宅サロンの開業にはどれくらいの資金が必要?
自宅サロンの開業に必要な資金は、サロンの規模や提供するサービス内容によって異なります。
まず、自宅の一室をサロンに改装する際には内装や設備の改装費用がかかります。また、エステ用のベッドや美容機器など設備や備品の購入も必要です。
さらに、タオルや使い捨てスリッパなど消耗品にかかる費用や、チラシ作成やウェブサイト制作、SNS広告などの広告宣伝費、そして当面の運転資金も考慮しなければなりません。これらを踏まえると、開業に必要な資金の目安は100万円から300万円程度とされています。
自宅サロンの開業に役立つ助成金
自宅サロンの開業に役立つ助成金には、以下のようなものがあります。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、事業主が従業員に対して、仕事に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練を行った場合に、訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
現状、以下の6つのコースが用意されています。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
サロンの運営には人材の育成が欠かせません。この制度を利用することで、人材育成にかかる費用の一部を助成してもらうことが可能です。
地域雇用開発助成金
「地域雇用開発助成金」は、雇用機会が特に不足している地域の事業主が、事業所の設置や整備を行い、その地域に暮らしている求職者を雇用する場合、設置整備費用や労働者の増加に応じて、国が助成する制度です。
最少50万円から最大800万円まで支給され、1年ごとに最大3回まで申請可能となっています。
対象となる地域で自宅サロンを開業し、地域雇用に貢献することで、助成金を受け取ることができます。
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取り組みを行った事業者に対して、国が助成する制度です。
現状、以下の6つのコースが用意されています。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改正コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース(※令和8年3月31日まで)
正社員化コースの場合、中小企業では1人あたり80万円の支給が可能です。
両立支援助成金
「両立支援助成金」は、仕事と家庭の両立を支援するため、育児や介護に関する制度設備や職場環境の改善に取り組む事業主に対して、国が助成する制度です。
現状、以下の7つのコースが用意されています。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 育休中等業務代替支援コース
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース
- 不妊治療両立支援コース
- 事業所内保育施設コース(※新規受付停止)
育児休業や介護休業の取得促進、短時間勤務制度の導入、不妊治療と仕事の両立支援など、多様なコースが設けられているのが特徴です。
業務改善助成金
「業務改善助成金」は、事業主が職場の生産性を向上させるための設備投資や業務改善を行い、従業員の賃金を引き上げた場合に、その費用の一部を国が助成する制度です。
例えば、業務効率化のための機械設備の導入や、従業員のスキルアップを目的とした研修の実施などが当てはまります。この助成金を活用することで、職場環境の改善や従業員の待遇向上を進めることができます。
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」は、職場経験が少なく就職が難しい方を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間トライアル雇用を行う事業主に対して国が助成する制度です。
トライアル雇用を通じて、企業は求職者の適正や能力を見極めることができると同時に、求職者も自分に合った職場かどうかを判断できます。
雇用調整助成金
「雇用調整助成金」は、経済的な理由で事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主が、従業員の雇用を守るために行う休業、教育訓練、出向にかかる費用を助成する制度です。
万が一の場合、経営が厳しい状況になった場合でも、この制度を活用することで従業員の解雇を回避し、雇用の安定を図ることができます。
自治体の助成金
各自治体が提供する助成金も、自宅サロンの開業に役立ちます。
例えば、東京都が行っている「創業助成金」では、都内で創業を予定している事業者や、創業後5年未満の中小企業者等を対象に、貸借料や器具備品購入費などの経費を補助しています。
また、その他の自治体でも独自の創業支援策を設けている場合があり、地域ごとに支援内容や条件は異なります。
自宅サロンを開業する際は、居住地域の自治体が実施している助成制度を確認し、必要に応じて上手に活用することが大切です。
助成金を利用する際の注意点
助成金を利用する際の注意点として、以下のようなものが挙げられます。
精算払い(後払い)である
助成金の支給は、事業実施後に受け取る「精算払い(後払い)」が基本です。そのため、助成金の支給が決定したとしても、まずは自分で開業費用を用意し、事業を進める必要があります。
助成金が支給されるまでには一定の期間がかかります。その間の「つなぎ資金」を自己資金で補えない場合は、前もって短期的な借り入れや資金調達の方法も検討しておくことが大切です。
申請から支給まで時間がかかる
前述の通り、助成金は事業者が申請してから実際に支給されるまで一定の時間がかかります。
申請先にもよりますが、一般的には申請から受給まで半年〜1年程度かかることが多いとされています。そのため、助成金が支給されるまでの運転資金もしっかり準備しておくことが重要です。
自宅サロンの開業には補助金も利用できる
自宅サロンの開業には、国や自治体が提供する補助金も利用することができます。
例えば、「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を支援する制度で、通常枠では最大50万円、特定枠では最大200万円の補助が受けられます。また、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」、「事業再構築補助金」などもあり、開業時の設備投資や業務改善に役立ちます。
まとめ
自宅サロンの開業に役立つ助成金について、詳しくご紹介しました。国や自治体では、新たに事業をスタートさせる方に対して、助成金や補助金といった制度を通じ、さまざまなサポートを行っています。
上記にご紹介した内容を参考に、助成金を上手に活用してみてください。