インターネットやSNSを通して誰もが気軽に美容に関する情報を入手できるようになった昨今、エステサロンでの施術は多くの人にとって身近なものとなりつつあります。
お客様の様々なニーズに応えるため、エステサロンの形態も多様化しています。自身で施術を行うセルフエステや、フェイシャルや痩身といった特定の部位や目的の施術に特化したサロンなどが新たに登場し、広く認知されるようになりました。
近年話題となっている形態の1つとして、店舗に足を運ぶのが難しい方を主なターゲットとする出張サロンが挙げられます。
今回のコラムでは、店舗型サロンと比較しながら出張サロンのメリットやデメリットを詳しく解説していきます。出張サロンの開業を検討している方は、ぜひチェックしてみてください。
出張サロンとは
出張サロンとは、店舗や自宅で施術を行うのではなく、お客様の自宅やオフィス、ホテルといった指定の場所に出向いて施術を行うサービスのことを指します。店舗に足を運ぶ必要がなく、遠出が難しい、あるいは自宅を離れられない以下のような方からの需要が高いです。
- 高齢者
- 自宅療養をしている方
- 郊外に住んでいて移動手段を確保できない方
- 妊娠中の方
- 小さな子どもを育てている方
- 自宅で介護をしている方
- 仕事が忙しくて店舗に出向く時間が取れない方
施術を行う際の流れは以下の通りです。
- 予約の確認
- 施術場所への移動
- カウンセリング
- 施術の準備
- 施術
- アフターカウンセリング
基本的には店舗を構えるサロンと同じように進めていきますが、施術する場所への移動が発生することや、現地で施術の準備をしなければならない点が大きな特徴だと言えます。
出張サロンを開業するメリット
出張サロンを開業すると、以下のようなメリットがあります。
- 初期費用・経費が抑えられる
- 好きな時間に働ける
- 開業・撤退が容易である
- 集客エリアをコントロールできる
初期費用・経費が抑えられる
一般的なエステサロンを開業する場合、店舗として使用するテナントを契約して保証金や敷金、礼金を支払います。サロンのコンセプトに合わせて外観や内装を整えることも必須であり、工事やインテリア購入のため多額の資金を用意しなければなりません。
店舗の立地や規模感などによって異なりますが、新たにエステサロンの店舗を構える際にはおよそ300〜600万円の費用が発生すると考えて良いでしょう。
さらに、店舗を構えてサロンを経営する際には、毎月約数万〜数十万円の家賃やおよそ1〜2万円の水道光熱費を毎月支払わなければなりません。こうした費用は、サロン経営におけるランニングコストの約10〜15%と決して少なくない割合を占めています。
一方、出張サロンの場合は店舗を構える必要がなく、施術で使用する備品と移動手段さえ用意すればビジネスをスタートさせられます。
初期費用は約15〜50万円と店舗型サロンよりも大幅に抑えることが可能。家賃や水道光熱費の支払いも不要なためランニングコストも削減できます。
好きな時間に働ける
出張サロンでは、店舗型サロンとは異なり明確な営業時間を設ける必要はありません。自身の都合とお客様が希望する時間が合うタイミングに施術を行えば良いため、生活スタイルに合わせて好きな時間に稼働できます。
本格的にビジネスを成功させたい方だけでなく、子育てとサロン経営を両立したい方や、副業として開業したい方にもぴったりな経営スタイルだと言えます。
開業・撤退が容易である
数百万円の開業資金を準備して店舗型サロンを始めようと思うと、失敗したらどうしようという強い不安を感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
お伝えしているように、出張サロンでは店舗型サロンと比べて初期費用がかなり少なく済むため、開業するハードルが比較的低いです。以下のような開業準備も不要であり、移動手段と施術に必要な備品さえ用意すればすぐにでもビジネスを始めることができます。
- 立地の選定
- テナントの内見・審査・契約
- 電気・水道・インターネット回線の契約
- 外観・内装の整備
店舗を持たないためテナントの原状回復が不要であり、ビジネスが上手くいかなかった際に容易に撤退できるのも特徴です。
集客エリアをコントロールできる
一般的に、美容サロンは定期的に通うことを前提とする施術を行います。自宅から通いやすい立地にあるサロンを選ぶお客様が多いことから、店舗の立地は集客力を大きく左右するポイントの1つだと言えます。
お客様が指定する場所で施術を行う出張サロンの場合、立地に関係なく集客を行うことが可能です。施術者が足を運べる範囲内であれば、集客に力を入れるエリアを調整できます。
高齢者が多く居住するエリアに積極的にチラシを配布するというように、ターゲットとなるお客様に合わせて特定の地域で重点的に集客するのも良いでしょう。
出張サロンを開業するデメリット
ご紹介したようなメリットのある出張サロンですが、以下のようなデメリットがある点に留意しなければなりません。
- 1日に対応できる人数が少ない
- 新規のお客様に信用されづらい
- スタッフの危機管理が必要である
- 臨機応変な対応が求められる
1日に対応できる人数が少ない
出張サロンではお客様が指定する場所に出向いて施術を行わなければならず、店舗型サロンや自宅サロンとは異なり施術間の移動が発生します。
また、移動中に交通渋滞や公共交通機関のトラブルなどに巻き込まれて予約時間に遅れてしまうのを防ぐため、時間に余裕を持ってスケジュールを組むことが求められます。
時間内に対応できるお客様の数が限られている点は、出張サロンならではのデメリットです。
近隣エリアでの予約をまとめて受け入れて施術間の移動距離を短くすれば、複数のお客様の施術を効率良く行うことができます。しかし、お客様の都合を優先してスケジュールを組んでいると施術間の長距離移動を避けられないこともあり、なかなか難しいのが現状です。
新規のお客様に信用されづらい
サロンの店舗を構えるためには多くの準備が必要になりますが、その分信頼性の高いビジネスを行っているイメージを与えることができます。一方、店舗がない出張サロンでは、新規のお客様からの信頼を得づらい傾向にあります。
出張サロンの認知度をアップさせたり信頼度を高めたりするため、以下のような対策を講じることが求められます。
- ホームページの内容を充実させる
- 施術スタッフのプロフィールを公開する
- SNSで日々の活動を発信する
- 既存のお客様に口コミの投稿を依頼する
- 駅や商業施設でチラシを配布する
スタッフの危機管理が必要である
出張サロンの場合、お客様の自宅やホテルといった慣れない場所で施術を行わなければならず、密室でお客様と2人きりの状況になることも珍しくありません。店舗型サロンに比べて、トラブルや犯罪に巻き込まれてしまうリスクが高いです。
異性のお客様の施術は断る、トラブルに巻き込まれた際の対応を事前に決めておくといった危機管理を徹底して行うことをおすすめします。
臨機応変な対応が求められる
同じ環境で施術する店舗型サロンや自宅サロンとは異なり、出張サロンでは毎回違う場所で施術を行います。
- ベッドではなく布団で施術を行わなければならない
- 訪問先のベッドが壁に面しており左右一方からしか施術できない
- 施術室の入口が狭く持ち込んだ施術用ベッドの搬入が難しい
上記のようなイレギュラーなケースも考えられるため、どんな環境でもお客様に快適に施術を受けてもらえるよう臨機応変に対応することが必要となります。施術する場所について事前にお客様にヒアリングして、最適な対応を検討しておくと良いでしょう。
出張サロンを開業する際の手続き
ここからは、出張サロンを開業する際に必要な手続きについて紹介します。
出張サロンを開業する際にも、店舗型サロンと同様に開業届を提出しなければなりません。この時、同時に青色申告承認申請書を提出すると青色確定申告を行うことができ、以下のような優遇を受けられます。
- 10万円あるいは65万円の特別控除を受けられる
- 赤字を最大3年間繰り越せる
- 家族への給与を上限なしで経費計上できる
なお、美容室やまつ毛エクステサロンのように国家資格が必須となる場合は開業届の他に保健所への届け出といった追加の手続きが必要となります。
美容サロンを開業する際の手続きについては、下記の記事でさらに詳しく解説していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
どんな環境でもお客様に質の高いサービスを提供しよう
開業するハードルが低く比較的気軽に始められることが、出張エステの最大の特徴です。店舗型サロンに比べて信頼を得づらいという側面もありますが、それぞれのお客様に丁寧で質の高いサービスを提供すれば客数の増加やリピート率の向上も期待できるでしょう。
どんな環境でも満足度の高いサービスを提供できるよう、お客様の気持ちに寄り添うことを意識してみてください。
株式会社NBSでは、美容機器を購入してくれた方に出張サロンを始めとした美容サロンの開業支援を実施しています。
マシンの導入研修や販促資料の提供、サロン経営に役立つセミナー動画の配信など、直営サロンで培ったノウハウに基づいた様々なサポートを行っております。