お客様の「もっと美しくなりたい」という気持ちに応え、美容サービスを提供するエステティシャン。華やかなイメージがあり、憧れの職種である反面、大変なこともあり働いていて息が詰まってしまうことも少なくない職業です。
今回のコラムでは、エステティシャンの離職率や、サロンで働き続けるかどうか決めるためのポイントを解説します。
エステティシャンの離職率は高い?辞めてよかった?
美容業界は、離職率の高い業界であるといわれています。厚生労働省が発表している「新規短大等卒就職者の産業別離職状況(平成31年3月卒)」によると、平成31年3月卒新規短大等就職者の中で、美容業界を含む生活関連サービス業に就職した人は1万4,441人。
そのうち、1年目までに離職した人は4,177人、2年目までに離職した人は6,423人で、2年目までに4割以上が離職しています。
参考:厚生労働省
これはエステティシャンも例外ではありません。ホットペッパービューティーアカデミーが行った「美容サロン就業実態調査」(2023年4月)によると、エステサロンに従事するエステティシャンの離職率は68.9%となっています。
エステティシャンを辞めたいと思っている方は一定数おり、ハードな現実から逃れられることで「辞めてよかった」と感じる方も少なくないようです。
エステティシャンが辞めたいと感じる原因
エステティシャンを辞めたいと感じたときは、なぜ辞めたいのか理由を明確にすることで、本当に辞めるべきなのか考えることができます。
エステティシャンが辞める理由には以下のように様々です。それぞれ詳しくご紹介していきます。
- 人間関係の悩み
- 勤務時間が長い
- 体力的な厳しさ
- ノルマによるストレス
- 給料が安い
- 事務仕事が多い
人間関係の悩み
基本的に女性が多い職場環境のエステサロン。先輩後輩や同僚を含めたスタッフ同士の人間関係がこじれてしまうことも少なくありません。一緒に働く方と良い関係を築けなければ、大きなストレスを感じる可能性があります。
また、お客様とのコミュニケーションやクレームに限界を感じて退職してしまうケースも多いです。お客様の中には短期的な結果だけを求めてクレームを投げかける方もおり、うんざりしてしまうこともあるようです。
勤務時間が長い
エステティシャンの仕事は基本的に勤務時間が長く、予約が詰まっていると十分に休憩をとれないこともあります。閉店後に研修に参加しなければならないこともあり、家に帰る時間が遅くなってしまいがちな職業です。
サービス業であることから、土日祝日に勤務することも多いため家族や友人と会うことが難しい場合もあります。結婚や妊娠などによりライフステージが変化すれば、続けていくのが大変になることも。
体力的な厳しさ
サロンで全身の施術をすることも多いエステティシャン。立ったまま、または中腰の姿勢で長時間肉体労働を行うため体力的に続けることが難しくなることが考えられます。腰などを痛めてしまうケースもあるでしょう。
しっかり休憩を取りつつ施術ができれば良いですが、実際は忙しさから体を酷使してしまうことが少なくありません。
ノルマによるストレス
- 新規顧客に無料あるいは安価で初回の施術を体験してもらう
- 有料プランを案内する
- その場で申し込んでもらう
エステサロンでは、上記のようなビジネスモデルを採用していることが一般的です。
店舗によってはノルマが定められているものの、お客様に強く営業をかけることを「申し訳ない」と感じてしまい、心理的ストレスを感じてしまうことがあります。
達成できなければ給与にかかわる、サロン内で孤立してしまうといったことも。
給料が安い
エステティシャンは、体力的にハードであると同時に専門性が求められる職業ですが、スキルに見合った給料が支払われていないと感じれば転職を考えるきっかけになります。
ただし、近年はその印象を払拭すべく完全週休二日制や、まとまった休みを取ることが可能なサロンも多くあります。手当が支給されたりエステティシャンの技術向上のための支援制度を設けているサロンもあるようです。
事務仕事が多い
エステティシャンに対して「お客様を美しくする」というキラキラしたイメージを持つ方は多いですが、実際には事務のような地道でハードな仕事は多くあります。社員になれば、アルバイトや社員の面接、シフト管理など施術以外の仕事が多く、接客をする時間が少なくなってしまうことも。
このような憧れのイメージと実際の業務のギャップで、サロンを辞めてしまう場合があります。
エステティシャンを続けることのメリット
エステティシャンを離職すれば、先述したようなつらさから解放されることが考えられます。ただ、エステティシャンを辞めずに続けることには以下のようなメリットもあります。
- 社員割引が使える
- 働きながら美意識を高められる
- 良い成績を残すことでやりがいを感じられる
社員割引が使える
エステティシャンを続けている間は、社員の特権として割引が使えることが多いです。美容に高い関心があるエステティシャンにとって、リーズナブルな価格で美容に自己投資できるのは魅力的。
自分が美しくなっていく感覚を実感できれば、仕事のことを前向きに考えられるきっかけにもなります。
働きながら美意識を高められる
エステティシャンは割引が使えるだけでなく、毎日長時間美容に関する仕事を続けることで自身の美にも気を遣うようになります。一般のお客様がなかなか継続して取り組めない美容に常に携わることで、自身の美しさも追及することができます。
良い成績を残すことでやりがいを感じられる
仕事を続けるうえで大切なのはやりがいです。厳しいこともありますが、自身の頑張りでお客様に喜んでもらえたり、売上がアップすれば大きなやりがいを感じることに繋がります。
エステティシャンとして充実感や自己成長を感じるためには常に最新の美容知識や技術を学び、経験を積んでいく必要がありますが、一度軌道に乗ればモチベーションが持続することも考えられます。
エステティシャンを辞める時の注意点
エステティシャンを続けていてどうしても苦しい場合は、転職することも1つの選択肢です。サロンを退職する際には、気持ちよく辞めるためにも以下の点に注意しましょう。
- 繁忙期を避ける
- 退職の意思は早めに伝える
- 引継ぎをしっかり行う
繁忙期を避ける
エステティシャンを辞める時は、サロンの繁忙期を避けて退職時期を検討しましょう。繁忙期に辞めてしまうと、サロンが人手不足に陥ってしまう可能性があります。
辞めるのだからどうでもいいと考えるのではなく、お互いに気持ちよく仕事に区切りをつけるために、繁忙期を避けた退職を考えましょう。具体的なエステサロンの繁忙期は以下の通りです。
- 肌の薄着が増える6月から7月
- 卒業式や入学式シーズンの3月
- 年末年始のイベントがある12月
退職の意思は早めに伝える
上司やオーナーに、退職する意思を早めに伝えておくことも大切です。繁忙期を避けるのと同じ理由で、ギリギリに辞めることを伝えてしまうと職場内での新しいシフトや引継ぎが間に合わなくなってしまいます。
引継ぎをしっかり行う
上記と同じ理由で、辞める日までにお客様や業務の引継ぎを行いましょう。具体的には、以下のような自分が関わっていた仕事を同僚や後任者に報告しておくと良いでしょう。
- 自分が担当していたお客様の情報
- 棚卸し業務や在庫の確認方法
- 社内外の業務に関わる方の連絡先
転職も1つの選択肢。自分らしい働き方を選択しよう
いかがでしたでしょうか。お客様に美を届けるエステティシャンは、苦しいこともある一方で大きなやりがいにつながる職業でもあります。
大切なのは、自分に合ったスタイルや環境で働ける職場を見つけること。自分が今何に満足しており、何に不満があるのかをよく考えた上で、新たに求人に応募することも検討してみると良いのではないでしょうか。