「トータルビューティシャン」という言葉をご存じでしょうか。トータルビューティシャンとは、美容に関する総合的なサービスを提供する仕事です。一般的に、美容サービスは各分野専門の施術者が担当します。それら全てを一手に担うのがトータルビューティシャンです。
本記事では、お客様の外見を美しく磨き上げるトータルビューティシャンについて、取っておくと良い資格やキャリアパスなども含めて解説していきます。
トータルビューティシャンの仕事
トータルビューティシャンは、ヘア、メイク、エステ、ネイルなどの技術を用いてお客様に総合的な美容サービスを施す仕事。美容系の職種の中から複数の役割を担うことが多く、店舗によって注力するサービスは異なります。
トータルビューティシャンがサービスを提供するトータルケアサロンではカウンセリングでお客様の美容に関する悩みを聞くことから始まり、それに応じたメニューの提案、サービスの提供を行います。
幅広い知識を学ばなければならず、時間をかけて勉強する必要がありますが、多彩な分野で活躍できる職業だといえるでしょう。
トータルビューティシャンの将来性
女性の美容に関する意識は近年高まりつつあります。サロン、コスメを含む美容業界は、2022年のデータでは全体として前年比を上回る売上規模を更新しています。
中でも、多角的な事業展開にシフトした企業は売り上げが好調なケースが多く、1つの分野に依存しないトータルビューティシャンは今後も注目されると予想されます。
また、昨今の美容業界全体の課題として「人材不足」が挙げられます。幅広い分野で即戦力として美容サービスを提供できる点からも美容業界で求められる職業だといえるでしょう。
トータルビューティシャンに向いている人の特徴
美容系の職業には様々な魅力があり、中でもトータルビューティシャンは以下のような魅力があります。
- 多彩な分野で活躍できる
- お客様が美しくなることに貢献できる
- 努力が成果に表れる
- 美意識が上がる
- 働く領域の選択肢を増やすことができる
- 柔軟な働き方が可能になる
お客様に合う最適なサービスを考えて提案する面白さを感じられるのも魅力的なポイント。自分の提案した施術によりお客様の悩みを解決できたり、より美しくなって満足いただくことができれば大きな達成感を味わえます。
これらを踏まえ、トータルビューティシャンは、以下のような人に向いている職業だといえます。
- トレンドに人一倍敏感だ
- 美容全般に興味・関心がある
- イメージを形として表現できる
- 手先が器用で細かい作業が得意
- 美しくなるための努力を常に怠らないようにしている
- 誰かに喜んでもらいたいという想いを持っている
- 色々な仕事に挑戦してみたい
トータルビューティシャンになるためのステップ
トータルビューティシャンになるためには、多彩な美容知識・技術を身に付けることが求められます。専門学校やスクールなどの養成施設で美容の知識や技術を幅広く学び、資格を取得してから就職するのが一般的です。
養成施設のメリットは、トータルビューティシャンとして働くことを前提として実践的なカリキュラムが受けられること。学内にサロンが設置されているところもあり、在学中から実務経験を積むこともできます。また資格の中には、美容師免許のようにセミナーや独学では取得できないものもあります。
養成施設ではトータルビューティー科を設けているところも増えてきているため、興味のある方は一度サイトで確認したり、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
トータルビューティシャンにおすすめの資格
トータルビューティシャンになるにあたって必須となる資格はありません。ただ、ヘアスタイリングやまつげエクステなど、資格がなければできない施術もあります。幅広い分野でお客様に美容サービスを行うプロとして活躍するために、資格は持っておいた方が良いといえます。
トータルビューティシャンが取得しておくと良い資格には、以下のようなものがあります。
- 美容師免許
- AJESTHE認定エステティシャン
- JMAメイクアップ
- JNAジェルネイル技能検定
- ファッション色彩能力検定
美容師免許
ヘアカットやパーマ、まつエクなどを行う場合は美容師免許の取得が必須です。国家資格である美容師免許は、受験するためにまず厚生労働大臣または都道府県知事の指定した美容専門学校に入学します。
それから「昼間課程:2年以上」「通信課程:3年以上」の課程を修了することで受験資格を得られます。美容師試験に合格した後は、申請をして美容師名簿に登録する必要があります。
専門学校によっては、トータルビューティシャンを目指すコース内で美容師免許を取得できない場合があるので、事前に確認しておきましょう。
AJESTHE認定エステティシャン
エステティシャンとして働く上での専門知識や技術を身に付けていることを証明する「認定エステティシャン」のベーシックな資格です。
AJESTHE(日本エステティック協会)が主催します。資格がなくてもエステティシャンとして施術を行うことはできますが、資格を保有していればより仕事の選択肢が広がるでしょう。
資格を取得するためには以下のような条件を満たす必要があります。
①AJESTHE正会員になった上でエステティシャンセンター試験に合格する
②講習の受講または1年以上の実務経験
試験は筆記試験と実技試験の両方が課されます。専門学校で学ぶ際は、AJESTHEの認定校になっているかどうかを確認しておきましょう。
講習については、AJESTHE認定校での300時間以上コースまたは1,000時間以上コースを修了することが課されます。実務経験は、実際にサロンで勤務することが条件です。
JMAメイクアップ技術検定
JMAメイクアップ技術検定は、JMA(日本メイクアップ技術検定協会)が実施している、メイクアップの基礎力・技術力・接客力を高めることを目的とする資格です。受験資格はなく、実技試験のみで取得できます。
難易度は1~3級に分かれており、メイクアップ、ヘアメイク、ヘアスタイリングなどのサービスを提供する際に役立ちます。
JMAから公式テキストが発売されており、基本的にはその中から出題されます。テキストを読み込み、内容を頭に入れましょう。有料の動画セミナーもあるため、自分で勉強する際は活用すると良いでしょう。
JNECネイリスト技能検定
ネイルサロンでも通用する知識・技術を持つためには、資格を取得するのがおすすめです。中でも、JNEC(日本ネイリスト検定試験センター)が主催するJNECネイリスト技能検定試験はベーシックな資格です。こちらも1~3級に分かれており、受験資格は特にありません。
独学や通信講座でも取得できますが、技能を正しく身に付けるには専門学校で学ぶことをおすすめします。JNEC認定校のネイルスクールであれば、資格試験に対応したカリキュラムで学ぶことができます。さらに本番の試験も校内で受験可能で、普段通りの雰囲気で受験に臨めます。
色彩検定
色彩検定は、色彩検定協会が主催する色彩の知識や技能レベルを知ることができる試験です。色彩が人間に与える影響や、配色に関する理論などが学べます。文部科学省後援のため知名度も高いです。
トータルビューティシャンの仕事はお客様を総合的に美しく仕上げることです。色彩検定は仕事に直結する資格ではありませんが、美容業界では色の違いがもたらすイメージの違いを理解しておくことが重要です。
例えば、ネイリストであればお客様が求めるイメージに最適な配色デザインが求められます。メイクアップやヘアメイクに関しても、パーソナルカラーに合わせた配色選びがお客様の満足度アップに貢献します。
アロマテラピー検定
近年、アロマテラピーは家庭だけでなく様々なシーンで注目されるようになっています。日本アロマ協会が行うアロマテラピー検定を取得すると、香りが心身に影響を与える影響、精油の使い方などの基礎知識を学ぶことができます。
アロマテラピーの知識をアドバイスしたり、リフレクソロジーやアロマトリートメントの施術に活かすことに繋がるでしょう。
1、2級の2つの難易度があり、マークシート式の筆記試験を受験します。こちらも受験資格はありません。合格率はどちらも80%前後と高く、公式テキストをしっかりと読み込むことで十分合格できるでしょう。
トータルビューティシャンの就職先
トータルビューティシャンの就職先は、主に以下のような場所です。
- トータルビューティ―サロン
- エステサロン
- 美容室
- ネイルサロン
トータルビューティーサロン
トータルビューティーサロンとは、ヘアケアやメイクアップに特化せずに幅広い美容サービスを受けられるサロンのことを指します。トータルケアサロン、総合美容サロンと呼ばれることもあります。サロンによってメニューは異なりますが、多くは以下のような施術を展開しています。
- フェイスケア
- ボディケア
- ヘアケア
- メイクアップ
- まつげエクステ
- ネイル
- 脱毛
エステサロン
全身の美容に関するさまざまなサービスを提供するエステサロンも、トータルビューティシャンの主要な就職先の1つ。エステサロンでは以下のようなサービスを提供します。
- マッサージ・痩身
- フェイシャルケア・美顔
- 美容脱毛
- スクラブ・パック
- ブライダルエステ
中でもお客様にウェディングドレスを美しく着せ、結婚式での最高の花嫁姿を演出するブライダルエステは、美に関するトータルケアが求められます。トータルビューティシャンの腕が活かせるでしょう。
美容室
美容師免許を取得していれば、美容室で働くこともできます。エステサロンを併設するところも増えており、トータルビューティシャンの需要は高いです。
美容室ではヘアメイクアーティストとして、冠婚葬祭といった目的に応じたヘアメイクを行うこともあります。お客様を総合的にプロデュースできるトータルビューティシャンが活躍できる場所だといえるでしょう。
ネイルサロン
ネイルサロンもトータルビューティシャンの主要な就職先です。ネイルサロンでは、爪にカラーを載せたり、デザインやアートといった装飾を施すことに加え、爪周りを綺麗で健康的に整えるサービスを提供します。
幅広い知識を持ったトータルビューティシャンであれば、総合的な観点からお客様のイメージを具現化することができると考えられます。
トータルビューティシャンとして幅広い分野で活躍しよう
いかがでしたでしょうか。近年では美容需要の高まりとともにサービスが多様化しており、幅広い要望に対応できるトータルビューティシャンのニーズは高まっています。ホテルにビューティーサロンが併設されるケースも増え、トータルビューティシャンの活躍の場所は増えつつあります。
トータルビューティシャンへの道のりは簡単ではないですが、美容に関する仕事をしたいと考えている方は選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか。